日々のこと

食と体

5時ちょうどに設定したのにどういう了見なのか5時8分に鳴ったiPhoneのアラームに度肝を抜かれつつも、予定通り金沢行きの北陸新幹線に乗り込んで、通路を挟んで右隣のサラリーマン二人連れの話す同僚の昇進具合やメンタル疾患についての大声での会話や後ろの席の熟年夫婦の食べる貝の佃煮の匂いなどにまみれながら、晴れ渡った空に浮かぶ立山連峰を車窓から眺める幸運に感謝して一路金沢へ。

 

 

普段は敬遠する近江町市場にも、
平日の昼間だし大混雑ではなかろうと思い足をのばしてみた。

新鮮な魚介類、こんぶ、わかめ、海苔、お麩や湯葉、加賀野菜、きのこ、
「加賀丸芋」という山の芋、精肉、加賀棒茶… 

あらゆる食材が集まっていて、
それらを見るたびごとに
「ああ、あの鰤からは新鮮なアラがとれるな。大根と炊いたらおいしいんだ」
「ピカピカの鯵はタタキにして、生姜と切り胡麻と大葉をたっぷり混ぜて醤油をさっとかけたら美味しいに決まってる」
「豚足!豚足と肩ロースとバラをハーブとスパイスで煮込んでほぐして、型に流し入れて冷蔵庫で冷やし固めたゼリー寄せとか最高」…と、
もう妄想が止まらない。

 

食べるもの・食べることをおろそかにする人は、わたしはどこかで人として信を置くことができない。

うんちくとか、オーガニックにこだわりまくるとか
やたら美食とか、そういうことを言うのではない。

日々口にするものへの関心の低さが、
生活や人生への関心の低さのように感じられるからだ。

 

わたしたちは食べたもので出来ている。

食事はわたしたちのからだの主原料であり
命の力そのものとなる。
それをおろそかにすることは
与えられた命をおろそかにすることだから。

 

 

先月、地粉を使ったパンケーキのレシピを教わってきた。

わたしは小腸に持病があるため
グルテンが多く含まれるものや
小麦粉加工製品をうまく消化できない。
特にパスタやピッツァ、うどん、パンといった
小麦粉加工製品を多めに食べると
その後3日ぐらいお腹がしんどい。

だから正直なことをいうと
地粉のパンケーキを食べた後は
どれほどつらくなるだろうかという懸念もあったのだが
豈図らんや(あにはからんや)、
消化器はいっさい重だるくなったり痛くなったりしなかったのである。

 

小麦アレルギーやセリアック病、
糖質制限ダイエットブームのせいで
とかく敵視されている小麦粉だが、
人類の食の歴史は小麦粉とともにあったと言ってもいい。

わたしの地元、東京都小金井市でも
昔は米よりも小麦粉の方がよくとれたので、
農家ではつい最近まで
うどんを常食としていた歴史がある。

地粉のレシピを教えてくれた講師の方が
教えてくれたことを、かいつまんで紹介する。

日本で販売されているパスタやパンの多くが
北米産の輸入小麦粉からできている。
精製された小麦粉を輸入する際には
防虫剤等が用いられる。
また、北米の大規模農場では
効率化のために農薬を大量に使っている。

一口に小麦アレルギーといっても
実際には小麦の何に反応しているのかは
判明しないケースの方が多い。

わたしが2年半前にお世話になった
アレルギー外来の医師にこう言われたことがある。
「アレルギー検査ではわからないことの方が多い。食べたら具合が悪くなったという体験(エピソード)の方を重視してください」。

そう。もしかしたらアレルギー反応や体調不良は
小麦がひきおこしているのではなく
残留農薬、防腐剤、防カビ剤、防虫剤が
引き起こしている可能性もあるのだ。

 

今回の一泊二日の金沢旅行中、外食やコンビニで買えるもので食事を済ませたら、帰宅後、口内炎が二つもできてしまった。

体は正直だ。

手軽に買えてすぐ空腹を満たせる便利なものを食べて時間の余裕を得ても、
目に美味しい・口に美味しいものを食べていっときの幸福感を味わっていても、
食べたものが体に合わなければ体はかならずダメ出しをしてくる。

 

食についても情報と選択肢が溢れている時代に、
自分にとってどういう食事が最適かを知るには
体からのサインで見極めるのがやはりいちばんいい。

メディアが話題にするダイエット法や健康法は
基本的にあてにはならないと考えていた方がよさそうだ。