わたしのこと

親を超す時

昨年秋に耳鼻科で処方された抗生物質を服用して以来、ひどい口内炎、歯肉炎、味覚障害に悩まされている母のために、その前後で処方された薬の副作用について調べてみました。

薬を処方される時に医師はどれだけの副作用情報を把握しているんだろう、各機関からだされた勧告をちゃんと頭に叩き込んで現場に来ているんだろうか…と疑問に思い、お薬手帳に「これらの抗生物質は処方しないでください」と書いて一覧を添付しました。

母に「次に病院に行ったら、診察室でまずお薬手帳のこのページを見せて、そのうえで先生に処方箋を書いてもらうようにしてね」、「これまでの処方された抗生物質の主な副作用はこっちに書いておいたからね」等々説明していて、あれ、なんでこんなことも母はできなくなっちゃったんだろう?と愕然としました。

母は私から見たら完璧な良妻賢母、完璧な母親でした。
若くておそろしく美人で賢くて、料理がうまくて、器用で洋服でもバッグでもなんでも縫ってくれて、華道師範で、英語の先生で、古今東西の芸術・美術・文芸・音楽に通じる教養の持主で、人あたりもよくて常識的で。
容姿が父方の系統に似た私は、親戚や近所の大人から「お母さんに似なくてかわいそう」「お母さんはあんなに美人なのにねぇ?」と言われながら育ちました。そういうことも相まって、母を、どれほどがんばっても私には到達し得ない、完全なお手本の様に感じていました

私に、医者の言うことを鵜呑みにしない、処方された薬の副作用はチェックするということを教えたのも母でした。今のようにインターネットなどない時代、医者から処方された薬を調べられる書籍が実家にはあり、病気がちだった私はよくそれをくって調べていたものです。

それなのに今や母にはその根気すらなく、自分を守るために講じるべき手段も講じず、私の指示を「うん。うん。わかった。そうするね」と言って聴いている。

気がつけば私は、私が母のことをパーフェクトだと感じていたころの年齢で、つまりそういうことなんだと気がつきました。

30代から40代は、気力も知力も応用力も充実している年代なのでしょうね。
若い頃の体力はなくなってきても、それを補うだけのあらゆる意味での器用さがでてきて、世間に揉まれて知恵もついてきて柔軟な思考もできる。
それに対して親世代は70代となり、生物としてはどんどん下り坂を降りてゆく。

ああ、親を超えてしまったんだな。

そう感じた一瞬でした。