古楽器マニアでもあるギタリスト:長谷川郁夫さんの演奏会に2017年6月3日に行って参りました。長谷川さんのライブはこれで2回目となります。
今回は「リラ」という名前の、妙な格好をした古楽器を奏でるということで否が応でも期待が高まります。
「18世紀末、ヨーロッパに生まれた優雅な竪琴フォルムのリラは、当時の人々の古代ギリシャへの憧れが結晶化した、ファンタジックな弦楽器でした」(長谷川さんによるちらしから引用)とあるように、竪琴を模して作られた、ギターみたいな弦楽器が「リラ」です。
下記は、当日配布された資料です。最初はウミガメの甲羅にアンテロープの角で作られた竪琴のような構造の弦楽器だったようです。(①と②を参照)
それが時代を経て、指板つきのネックが真ん中について、左右の角のデザインは飾りのようにして残ったもののようです。
ボディに二つのホールが空いていて、柔らかで微かな響きが魅力的でした。古臭い音ではないのは、長谷川さんの腕によるものでしょう。
今回は国立にあるギャラリー・カフェ:Pupuさんでお食事つきの演奏会で、途中でデザートを配膳する時間をとるために演奏会も休憩を挟んだ二部構成になっていました。が、コーヒーやハーブティーを注文する人が続出したので第2部がなかなか始まらないというアクシデントもあり…その間に私は長谷川さんを質問攻めにしてきました!
13世紀や15世紀の曲の楽譜をいったいどうやって入手なさるのかと思ったら、海外の愛好家のウェブサイトや図書館のウェブサービスで、誰でもダウンロードできるのだそうです。「著作権はとっくにきれていますから!」とのこと(笑)
そうやって発掘した楽譜も、現代のような楽譜とは全く異なる書き方をされているので、推測につぐ推測で「多分こうだったんじゃないか」とせざるを得ない部分が非常に大きいのだそうです。
リラは現代の音楽とも相性がよく、第2部で演奏された Magic Serenade/魔法のセレナーデはドキドキするような美しさでした。
アンコールでは、長谷川さんのギター教室に以前通っていらした生徒さんの米寿を祝い、その方が12歳の時に作曲なさった歌を演奏されました。12歳で作曲というだけでもすごいのに、それを友達がピアノで採譜してくれて譜面を起こしたというのもまたすごい…!
「もう70年以上前の曲なんですよ」とニコニコしながらおっしゃる元・生徒さんと、その曲を慈しむように奏でる長谷川さんの姿になんて素敵なんだろうと胸が熱くなりました。
最後の曲はアメージング・グレイスでした。
素朴な民謡調のアレンジがリラにぴったりでした。
客席から低い歌声が自然に起こった時には、音楽が弾き継がれ、歌い継がれてゆくことに理由はないと感動を新たにしました。