ロルフィング®とは

ロルフィングとは・アイキャッチ画像

Dr. Ida P. Rolf
ロルフィング®(正式名称はロルフィング・ストラクチュラル・インテグレーション)は、アイダ・ロルフ博士(1896-1979)(1916年ニューヨーク州バーナードカレッジ卒。ロックフェラー財団の医療研究所で働きながら 1920年コロンビア大学にて生化学の博士号を修得)により創出された手技です。手技とは、器具や装置は使わず、クライアントの体に手で直接触れて不具合を整えてゆく技のことです。

ロルフィングの目的は姿勢矯正ではない

ロルフィングは、クライアントの体をいわゆる「いい姿勢」に矯正することを目的とはしません。
なにが「いい姿勢」であるかは時代や文化によって異なりますし、人の身体には生まれ持った特性があります。骨格や関節の可動域等はそれぞれの人により様々であるのに、無理やり鋳型にはめこむように「いい姿勢」をクライアントに押し付けるのは無理があります。
また、ダンサーやアスリート、アーティストの身体も、その職業を続けてゆくうえで 必要な姿勢や癖を持っていますが、それを不自然であるとして「自然な」体を強要したのでは、その人はプロとして暮らしてゆけなくなってしまいます。

ロルファー™はクライアントの置かれている環境(職場環境、住環境、人間関係、文化的背景等)を考慮し、クライアントが与えられた環境下で、その体で、いかにのびやかに楽に生きられるかを考えてセッションを組み立てます。これが他のマニュアルセラピーとロルフィングの大きな違いの一つです。

ロルフィングはどんな施術なのか

施術で具体的にどのようなことをするのかというと、手や腕、肘を使ってゆっくりと圧を加えることで、筋膜や筋肉、靭帯、腱等の緊張のバランスを整えたり、癖になっている不要な動作をしなくて済むように 動作の再教育をしたり、内臓にまで影響する心身の緊張をとりのぞいたりします。
どのようなテクニックを使ってセッションを運んでゆくのかは、ロルファーにより、また、クライアントのその時の体の状態により、様々なバリエーションがあります。

近代から現代にかけて、西洋医学は患部に注目し悪いところを治す事に注力してきました。どんなことが体の中で起きているのか、細胞レベルでまで解明できるようになっています。 人の身体をパーツの集合体してとらえているといってもいいでしょう。

それに対し、ロルフィングではクライアントを全体でひとつの存在としてとらえます。足が痛いクライアントがいた場合、 足だけに施術するのではありません。その足の痛みをつくりだしているのは何か、クライアントの身体・価値観・文化的背景・生活パターン等、全体をみて原因を探り出し解決を試みます。

対処療法的なその場しのぎ的なことはしません。不調のもとを探り、全身のバランスやクライアントの動作や思考のパターン、健康なところ等々を見ながら、原因に働きかけることによって根本的な解決へのすじみちをつけます。

つまり、ロルフィングは体の「悪いところを治す」ことだけにフォーカスしたセラピーではないのです。健康なところ、機能的なところに着目し それが体のすみずみまで広がってゆけるように体の環境を整え、最終的にはクライアントがロルフィングから卒業できるようになることを目指します。

ロルフィングは体の主導権を取り戻すことを重視します。

私たちは体に不具合があると病院にゆき、医師の診断を聴き、その指導に従って治療することに慣れています。日本のように充実した医療を気軽に受けられるのは たいへん素晴らしい環境ですが、その環境に幼いころから身をおいていると「私の体の主導権は私にある」という大切な事実を忘れてしまいがちです。

私たちが感じる体の違和感や痛み、しびれ、悪寒、こわばり等は、数値として体のどこかにピッと表示されるようなものではありません。それゆえに伝えるのが難しく、 また、第三者が客観的に判断するのも難しいと言えます。血液検査やMRIやX線写真には写らない体の不調を、気のせいにしたり、仕方がないものとしてあきらめたりした経験を お持ちの方も多いと思います。

体の感覚を無視したり我慢したりすることに慣れると、体はさらに鈍感になってゆきます。 しかし、本来、痛みやしびれなどは不調を知らせる信号です。それを無視していて、体にいいことはありません。

体からの信号を感じ取り、自分の感覚を信頼し、主体的に体にかかわる事は、健やかな生活を長く続けてゆくうえでの基礎になってくれます。
主体的に自分の体にかかわることを思い出してもらうよう、ロルフィングはセッション中にクライアントの意識と気づきとに働きかけてゆきます。クライアントが体の感覚に敏感になり自らの体の主導権を取り戻すことを、ロルフィングでは重視します。ロルファー™は、施術のことを「セッション」と呼びますが、 これは、施術者とクライアントの双方が相互に作用しあって施術の効果を高めてゆくからです。

ロルファーがみていること

クライアントを包括的にみることを優先し、痛む箇所に直接ワークしないのはなぜか。ひとつには、ロルフィングが、”筋膜”という、筋肉を包んでいる薄くて伸縮性のある組織と、個々の筋膜同士のつながりとに着目しているからです。

筋膜はストッキングや蜘蛛の巣に喩えられることが多いように、伸縮性に富む、たいへん繊細な網目状の組織です。料理をする方なら、豚の塊肉や鶏胸肉に薄いシート状の組織がくっついているのをご存知と思います。あれと同じものが人の体にもあります。精肉では筋膜の伸縮性は失われてしまっていますが、実際に生きている時には伸び縮みするシートだったと思ってください。

複雑な模様編みのベストを思い浮かべてみてください。そのベストの裾が何かにひっかかって引っ張られてしまったら、編み地全体にその影響はおよびます。

Ida P. Rolf, Ph,D. “ROLFING -Reestablishing the Natural Alignment as Structural Integration of the Human Body for Vitality and Well-being” 1977 and 1989

同じことが、人の体をつつむ全身ストッキングのような筋膜でもいえます。どこかに生じた組織の偏りが、本人も思いもよらぬところにまで影響を及ぼすことがあります。痛みを感じる箇所そのものに原因はないかもしれません。

筋膜は個々の筋肉を包んでいます。皮膚に近い浅い層の筋肉と、骨に近い深い層の筋肉とがいくつも重なる箇所ほど、筋膜同士も複雑に重なり合います。隣接しあったり、付着する骨を共有していたりする筋膜同士も互いに影響しあいます。

たとえば背面の筋肉をつつむ筋膜は、下の図のように、深い層(一番左側の図)から中間層(図:中央)、浅層(図:右側)でこのようにおりかさなってゆきます。腰のあたりを中心にして、太ももから首にかけて、筋膜が重なりあい、繋がりあっていますね。

R.Louis Scheultz, Ph.D. and Rosemary Deitis, D.O.
“The Endless Web – Fascial Anatomy and Physical Reality” 1996

 

腰痛を訴えるクライアントが来たら、ロルファーはまず全身のバランスをみたり動作をしてもらってどこに制限があるのかをチェックします。そして肩からワークを始めるかもしれません。

この時、ロルファーの頭の中にあるのは、腰に繋がるいくつもの筋肉とそれらをつつむ筋膜のつながりです。

太ももの両側(ITバンド)も筋膜で腰とつながっている。また、背中の筋膜は、骨盤の中をとおる深い筋肉:大腰筋にも繋がっている。上は広背筋や僧帽筋とも繋がっている。そういう解剖学的知識をふまえて、大腰筋は機能しているか?太ももの両側やお尻は固くなっていないか?肩甲骨の可動域はどうなっている?ということをみてゆきます。

そして、最も改善の可能性があるところを皮切りに、徐々に筋膜をゆるめたり、筋肉が伸びやかに動けるようにしたりすることで、全体がゆっくりバランス良く回復してゆくのをロルファーは手助けします。

「腰が痛いんだから腰を揉んでよ」という気持ちはよくわかります。でも、痛む腰を揉んだからといって、再発しなくなりますか?その場しのぎの対処療法を受け続けていても、いつまでも痛みや不調とは縁が切れません。

自分の体の責任は自分にあります。自分の体と向き合うことは、怖いことではありません。がっかりぐらいはするかもしれませんが、10シリーズを受け終えるころには、自分の体のいいところ、楽なところ、健康で信頼できるところをたくさん見つけ出しているはずです。

・ロルフィングはホリスティックセラピー
・身体の歪みをとる、動作を改める。その結果不調が減る
・ロルファーは部分ではなく全体を観る
・クライアントの自主性が大事

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