ココロとカラダ

なぜストレッチをしてもすぐ体はかたくなるのか?

アンケートで見えてきた「ストレッチしているのに体がかたい」「不調が解消しない」という不満

認定ロルファーの利香です。
先月、Googleフォームを使ったアンケートを実施しました。4割弱が体が硬いことに悩み、半数以上がセルフケアとしてストレッチを挙げていました。ところがストレッチしても体がすぐかたくなる、翌日にはもう肩が・首が凝るという訴えとセットになっていて、せっかくやっているストレッチの効果を感じられないという実情が見えてきました。
そこでフェイスブックで「なぜストレッチをしてもすぐ体はかたくなるのか、知りたいですか?」と投稿したら、たくさんの反響をいただきました。

毎日ストレッチを行なっているのにすぐかたくなる理由について、今日は書いてみますね。

ストレッチの種類

ストレッチは大別すると2種類。ゆっくり時間をかけて軟組織を伸ばす静的ストレッチ(スタティックストレッチ。一般的にストレッチと言われて思い浮かべるものがこれです)と、反動や強度、動作にバリエーションをつけた動的ストレッチ(バリスティックストレッチ、ダイナミックストレッチ)があります。これ以外にも、主にリハビリの現場で用いられるPNFストレッチや、最近では独自の理論を用いるストレッチの技法もあります。

動的ストレッチはアスリートやダンサー向けなので、わたしのアンケートに答えてくださった皆様の知りたいこととはちょっとずれてしまいます。それに動きや反動を使ったストレッチは必ずプロの指導のもとにやっていただきたいので、今日は説明から省きます。

ストレッチの原理

ストレッチで体が柔らかくなる原理を知っていますか?
なぜ筋肉に力を加えて伸ばすと関節の可動域が広がるのでしょう。
その原理を簡単に説明します。

皮膚には火傷防止のために熱さを感知するセンサーがあるように、筋肉には断裂を防ぐためのセンサーがあります。複数のセンサーがありますが、ストレッチに関わるのは「長さ」と「張力」を感知するセンサーです。これらのセンサーから脊髄に「今、どこの筋肉がこんな長さと張力の状態になってますよ」という信号が送られて、反射が起きます。

腕を捻りあげられたら体をそらしたりひねったりして、手首・肘・肩に加えられた力をそらそうと、無意識に動きますね。あれは筋肉や関節の各センサーから「やばいです!このままではどこかに怪我をします!」という信号が脊髄に送られ、反射が起こるからです。

ストレッチでもこういった「反射」がカギになります。
脊髄は「筋肉が伸ばされてます」という信号を受け取ると、防御のために反射を使って筋肉を縮めます(伸長反射)。次に、筋肉が腱に変化して骨に付着するところ(筋腱移行部)にもセンサーがついていて(ゴルジ腱器官)、筋肉が縮んだことを察知すると今度は筋肉を保護するため、筋肉を緩める働きをします(自己抑制(Ib抑制))。

つまり、筋肉は伸ばされると「いきなり伸ばされた!縮もう!」と収縮する反射(伸長反射)と「うお。いきなり縮んだ。あぶな。緩めよう」と弛緩する働きが瞬時に起こるというわけです。

静的ストレッチの目的は可動域を増やすことなので、筋肉が縮んだら困ります。だから伸長反射をできる限り起こさないようにしながら行なう必要があります。そのため、急激な力をいきなり加えるようなやり方ではなく、ゆっくりじわじわと力を加えてゆく必要があるのです。

なぜストレッチをしても体は再びかたくなる?

理由その1 正しいやり方でやれていない(強度、時間、伸ばす方向、意識)

上で書いたように、静的ストレッチを効果的に行なうためには、強い力で急激に伸ばすとか反動をつけるという方法はNGということがわかったと思います。ゆっくり息を吐きながら30秒かけて伸ばすというのは伸長反射を出さないために、守ったほうがいいです。時間はちゃんと時計で測りましょう。そして回数も重要です。毎日継続しましょう。

また、ストレッチのため力をかける方向と姿勢(ポジショニング)が間違っていると、効果的に筋肉を伸ばせません。関節の位置をほんの少し変えるだけで、伸び方が変わります。ゆっくり少しずつ角度や姿勢を試してみましょう。

かなり大事なのが意識です。人の身体は意識を向けたところが[オン]になります。どこの筋肉を今ストレッチしているのかを意識して伸ばしましょう。テレビや動画を見ながら、または喋りながらダラダラやっていても効果は弱いです。

理由その2 運動不足

せっかくストレッチを適切にやっても、日常生活で決まりきった姿勢しかせず体を使わないでいるのも、ストレッチの効果を感じられない原因となります。反復してやる動作は得意になります。ピアノや弦楽器を1日に1時間以上弾いていた時はしなやかだった手首も、楽器から離れてデスクワークばかりするようになったらかたくなります。1日に1分程度しかしないストレッチだけでは追いつかないのです。

理由その3 間違った使い方をしている

筋肉がガチガチになった結果、関節の可動域が狭くなって「体が硬い」と感じる場合、それは間違った体の使い方をしているからです。
脚の前側や外側の筋肉を過剰に使う立ち方・歩き方をしている人が(女性だとハイヒールや足裏のトラブルが原因のことが多い)、毎晩太もものストレッチをしたところで、また翌日には同じ立ち方・歩き方をするわけです。いくら筋肉を伸ばしても(対処)、間違った動作(原因)がなくならないのでは、いたちごっこになります。

理由その4 骨格の個性

骨には個人差があり、関節を構成する骨の格好によっては、どうしてもやりづらい動作があります。骨同士がつかえてしまうケースです。これはあきらめましょう。また、股関節形成不全や肩関節が浅いなどの個性がある場合は、脱臼するリスクもあります。自分の骨格の個性を知っておきましょう。

再び体がかたくなるのを防ぐには

もうおわかりかと思いますが、ストレッチの効果をしっかり出して、再び体がかたくなるのを防ぐにはかなり地道な作業が必要になります。防止策をまとめるとこうなります。

  • 防止策1 正しいストレッチ方法で継続する
  • 防止策2 身体は運動して使おう
  • 防止策3 身体を正しく使う

自宅で手軽にできるので”やっている感”を出してしまいがちなストレッチですが、自己流でなんとなくやっているだけでは効果は出にくいのです。ジムでストレッチのクラスに参加したり、パーソナルトレーナーにマンツーマンで教えてもらったりして、「正しいストレッチ方法」を学ぶのが、最も確実です。学んだ後は継続して、運動も併用するといいですよ。
動作がそもそもうまくできない場合は、ロルフィングのような構造ワークを受けてみてもいいでしょう。構造ワークは怪我防止の観点から、普段の運動習慣がない人には特にお勧めです。いきなり高い負荷の(だけど一見するとそれほどとは思えない)アクティビティに挑戦して、身体を傷めたのでは本末転倒です。

ストレッチは正しくやれば一生使えるスキルになります。ヨガが好きならやってみたいアサナを目標にしたり、肩こりや腕コリに悩む方なら継続的に取り組んでみたりしてください。

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