認定ロルファー™の利香です。
通称:医療広告ガイドラインや薬機法の改正をうけて、いわゆる民間資格の各種セラピー、ボディワークについても「広告としてビフォーアフターや体験談を載せたらダメになるんだ!」と勘違いしている人が多いのですが、自分がそれに該当するかどうかを確認しましたか?ホームページ作成会社やコンサルタント、プロモーションや広告でお世話になっている人の言うことを、鵜呑みにしていませんか?
ボディワーカーのための起業サポーターを自認するわたしとしては、親切めかした脅し文句で不安を煽る風潮がちょっと(だいぶ)気に入りません。法律や条例に抵触するようなことはしたくないと思っている真面目なセラピスト、ボディワーカーを怖がらせてどうしようというのか。「法律が変わりました。だからこうする必要があります。つきましては幾ら請求します」と言われた時には、そう言ってきた相手が法律の専門家か、自分はその法律の規制の対象に含まれるのかを確認しましょう。
わたしは対象になるの?なにはともあれ法律やガイドラインの記載を確認
薬機法の対象
薬機法(正式名称「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)の対象になるのは、医薬品、医薬部外品、化粧品、指定薬物、医療機器又は再生医療等製品だけです。※1薬機法の改正は、サプリメント・化粧品・医療機器の製造や販売をおこなっていない民間資格者(ロルファーもこれにあたります)には関係ありません。
しかし、例えばもしあなたがパーソナルトレーナーやダイエットコーチで、商材としてサプリメントや機能性食品をも販売しているのであれば、発信に際して使う文言、広告の表現や設置方法について弁護士に相談してください。他種のボディワーカー、セラピストでも、商材販売を行っている人は弁護士に確認をとりましょう。
※1…医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第一章第一条に拠る
参考:厚生労働省ホームページ 医薬品等の広告規制について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html(※2019/3/15現在、リンク切れになったためリンクは解除しています)
医療法の対象
医療法の対象となるのは「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所」で、医師、歯科医師、助産師が含まれます。
今回「ビフォーアフターの写真を使ったらダメ」の根拠にされているらしいのは、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告し得る事項等及び広告 適正化のための指導等に関する指針(通称:医療広告ガイドライン)」です。これは、医療法第6条の5の改正に伴い公表されたガイドライン(法律の実際の運用をどうするのかという指針を示したもの)です。
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/kokokukisei/dl/shishin.pdf
医療法第6条の5の改正は、「美容医療サービスに関する消費者トラブルの相談件数の増加等を踏まえ、医療機関のウェブサイト等を適正化するため、 虚偽又は誇大等の不適切な内容を禁止」※2する目的でおこなわれました。あくまでも医療機関が規制の対象です。こう書かれてもまだ不安な方は、厚生労働省が作成し公開している資料(改正医療法の施行に伴う 省令・ガイドラインの策定について) をご覧ください。広告規制の対象範囲 は医療法第2章第2節の「医業、歯科医業又は助産師の業務等の広告」であると明記してあります。
厚生労働省が公表しているプレゼン資料のPDFは、忙しい医師や病院事務局職員に向けて書かれています。短時間で理解しやすいように作成されているものがほとんどです。ちょっと読むと、今回の「医療広告ガイドライン」は、民間資格のみ保有していて、かつ、その資格にのみ特化したサービスを行っている事業主は対象外であることがわかります。
もし、医師でかつロルファーでもある人が(日本では滅多にないですけど)、個人経営の病院でロルフィングも提供しているような場合だったらどうなるのか?これは法律の専門家である弁護士に相談した方がいいでしょう。
※2…引用元:医療広告規制の検討状況と 今後の取組について (平成30年2月14日 厚生労働省医政局総務課)
景表法の対象
悪質な広告や商品販売方法を規制するための「景品表示法」通称:景表法もあります。この景表法の対象となるのは景品表示法第2条第1項に規定する「事業者」すなわち「商業、工業、金融業その他の事業を行う者」です。法人格を持たない個人事業主もこれに含まれますし、各種セラピスト、ボディワーカーもここに含まれます。
景表法がなぜ必要なのか。それは、景品や特典で消費者を釣ったり、製品の価値を高める印象操作のため紛らわしい表示(100%オーガニック等)や、誇大広告、おとり広告(存在しない魅力的な不動産物件の広告等)で消費者を販売・契約ページへと誘導するといった行為を防ぎ、消費者を保護するためです。
一般向けの消費者庁発行のパンフレットにも一度目を通しておくといいでしょう。
「よくわかる景品表示法と公正競争規約」
「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針 (平成26年11月14日内閣府告示第276号) 改正 平成28年 4月 1日内閣府告示第125号 」が発せられたのを見ても、「管理上の措置を講じなかった事業者への罰則が強化される」という流れがあるのは間違いありません。特に食品、化粧品、不動産、金融商品を扱う事業者は神経を尖らせて、これまで以上に慎重になる必要があるでしょう。※3
※3…上記の指針に関するQ&Aも参考になります。「消費者庁ホームページ 指針に関するQ&A」
景表法を根拠とした広告規制強化はありえるのか?
景表法については
商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示(5条3号)
・無果汁の清涼飲料水等についての表示
・商品の原産国に関する不当な表示
・消費者信用の融資費用に関する不当な表示
・不動産のおとり広告に関する表示
・おとり広告に関する表示
・有料老人ホームに関する不当な表示
とされています。現時点ではここにボディワークや各種セラピーは含まれていませんが、ボディワーク業界も景表法を根拠とした広告規制強化はありえるのか?という疑問が残ります。
これについては現時点では限りなくグレーだと思います。医療法、薬機法、景表法が患者/一般消費者を騙すような表示や広告は規制する流れにあるのですから、世間一般の潮流としては、規制強化の気運が高まるのではないでしょうか。今はよくても来月以降、来年以降も、このままゆるくやってゆけるわけではないかもしれません。
いずれにしても、わたしは法律の専門家ではありません。わたしの言うことも、鵜呑みにはなさらない方がよいでしょう。景表法を根拠にボディワークや各種セラピーの広告も自主的に規制しなくてはならないのか?もしそうだとしたらどの程度までなのか?といった個別の疑問については、景表法に詳しい弁護士に相談するのが確実です。複数の資格を持ち多角経営をなさっている(または数年以内にしようと目論んでいる)事業主だったら、今から対策を講じるのがよいと思います。
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