認定ロルファーの利香です。
前回に引き続き、更年期障害について書いてみます。
女性ホルモンは一種類ではない
女性ホルモンといわれるものは二種類あります。エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)です。よく知られているようにエストロゲンは乳房を発達させたり血管を強くしたり卵子を作ったりしています。プロゲステロンは子宮内膜の状態や体温を司っているホルモンで、このふたつが連動することによって生殖可能な環境を整えます。
サプリメントで脳が混乱
女性ホルモンは脳からの指令によって分泌されます。視床下部はいわばコントロールセンターで、血液中のホルモン濃度をチェックしながら、女性ホルモンの分泌タイミングを決めます。女性ホルモン放出の合図は視床下部から脳下垂体へと伝達され、次にその指令は卵巣へと伝達されます。
サプリメントで脳が混乱すると前回の記事で書いたのは、サプリメントによって血液中のホルモン濃度が上がったと錯覚した視床下部から、脳下垂体そして卵巣へと、これまで通りの指令(性腺刺激ホルモンといいます)が出ても、対応する卵巣では黄体ホルモンが作られないからです。「え?なんで黄体ホルモンでないの?早く出して!」と黄体ホルモンが分泌されるまで、脳から指示が出されるわけです。
では、なんでそれが辛いの?ホルモンなんて自然のものだしなんか悪いこと起きるの?と思いますよね。
PMS(月経前症候群)のような症状の悪化
あくまでわたしのケースですが、性腺刺激ホルモンが放出されることによって、PMSのような症状が悪化しました。実際には排卵もないし生理もやすやすとは来ないため、生理前と同じ症状:わたしの場合は乳房の張りや痛み、膣の収縮による鈍痛が延々続きます。
生理が来るまで延々です。これはなかなかつらい。来たら来たで非常に生理痛がしんどい。鎮痛剤を使わねば身動きもままならないレベルです。
だから「女性ホルモンは多ければいいってものではない」と医師に言われたわけです。脳からの指令も減るようにしてゆかないとならないのです。
更年期には膣内の環境が変わる
女性ホルモンは膣内の環境も整えています。膣は内臓(子宮)へとつながる器官ですが開口部でもあるため、細菌感染など起こさないように強い自浄作用を持っています。その環境を整えるpHバランスや分泌物の量の調整にも、女性ホルモンは関わっています。
女性ホルモンが減ってくる更年期の膣は、いわば衛生管理部門が深刻な人手不足となっている状態です。乾燥もするしpHバランスが崩れ感染症に対する抵抗力が下がりもするし、非常に傷つきやすい状態と思ってください。
目でも乾燥したら嫌な感じがしますよね。膣も同じように「うまく言えないけどなんか不快な感じ」「頻繁な鈍痛」などがするようになります。性交痛や日和見感染なども増えます。
婦人科で相談すると乾燥を和らげる膣剤を処方してくれることもありますので、うまく活用してくださいね。
デリケートゾーン専用のせっけんで刺激を少なく
pHバランスが膣内は違うので、デリケートゾーンを洗うときには普通のボディソープや石けんは避けましょう。これまで体を洗う石けんと同じものを使ってもトラブルがなかった人でも、更年期障害が始まったら使う洗剤も専用のものにするか、お湯だけにしたほうがいいです。
最近は薬局にも専用ソープが売っています。通販で買うときは「デリケートゾーン 専用ソープ」「フェミニン ソープ」などで検索するとヒットします。
デリケートゾーンの衛生について、ちゃんとした教育を授けてもらったことがない人がほとんどだと思います。(男女問わず!)確かに気を遣う話題ではありますが、これほど健康とQOLに直結している器官もありません。外生殖器の衛生も、手洗いうがいと同じレベルで語られるべきと思います。
パンティライナーはNG
また、膣内の環境が変わったせいで雑菌が繁殖するリスクも増えます。
微妙な生理が来たりこなかったりすることもあって、ナプキン代わりにパンティライナーを使いたくなりますが、それが更に雑菌を増やす原因となります。
パンティライナーは避け頻繁に下着を変えた方が良いと、わたしは婦人科医師から言われました。やむをえずライナーを使うのなら、1日に7〜10枚は使う勢いで交換してください。
定期的な受診の必要性
婦人科は妊娠・出産の時だけお世話になる場所ではありません。
婦人科には定期的に行って「今こういう状態なんだけど、放置してもいいのか、それとも何かできることはあるのか」を相談するのをお勧めします。
更年期障害に伴う症状なのかなと思っていたら、婦人科系の病気が潜んでいる場合もありますので、面倒でも半年に1回は通って欲しいです。
特に子宮頚がんは、発見と治療が遅れると骨盤内の臓器を全摘出せねばならなくなります。そうなると排泄方法も自然のままではいられなくなりQOLの低下はいうまでもなく、術後5年後の生存率が著しく下がるのです。ホント、みんな、検診受けて!
筋力低下と靭帯のゆるみ
生理中、前後は靭帯がゆるむのですが、これにも女性ホルモンが関係しています。
更年期は40代から始まりますが、運動習慣がない女性は筋力もごっそり落ちてくるのもこの世代からです。
そこに加えて靭帯も弱ってくると、腰から下の関節(股関節・膝・足首といった、体重を支える関節)に故障が増えます。なんだか膝が安定しない、膝に力が入らないという訴えは45歳以上のクライアントさんたちから頻繁に聞きます。30代以下では聞かない訴えです。
特に膝は大事にしてください。ひねる・捻るといった体勢のまま体重をかけるのはもちろん避けて、激しい運動をするときにはサポーターを使うなど工夫が必要です。年を取っても自分の脚で歩きたいですもんね。大事にしましょう!
自律神経の乱れは避けられない
ホルモンバランスが崩れると、自律神経も乱れます。
わたしの動悸の原因は主に貧血ですが、貧血以外に自律神経がおかしいからだな…と感じる時もよくあります。規則正しい就寝・起床パターンを心がけたり、呼吸で体をリラックスモードにしたり、デジタルデトックス、太陽に当たりながらのウォーキングなどの地味な工夫で対処しています。
更年期の自律神経の乱れは、自分のせいではないと思うこともかなり重要です。
今までてきていたことができなくなったり根気がなくなったりすると、まるで怠けているような気がして、「こんなことではいけない」と自罰モードに入るんですよね。それが更にストレスになりますので、更年期だからこういうこともあるさ!という割り切りも必要です。
これまで体力頼みで身体のケアをすっ飛ばしてきたのなら、更年期は身体と向き合ういい機会になります。ここで丁寧にケアして、更年期後の人生を満喫できるようにしておきたいですね。