認定ロルファー™の利香です。
耳管開放症の治療の一環として、音楽療法(アントロポゾフィー)なるものを受けてきてみました。どういうものなのか、興味津々。音の聞こえ方に不快な症状が出ているのに、音楽を聴かせるの?なんで??と謎でした。
音楽療法士の先生の自己紹介から始まり、わたしの現在の耳の症状、苦手な音などをお話しします。耳管開放症からくる、音の聞こえづらさと特定の音に対する敏感さに理解のある先生なので、安心して話せます。
お話しした後にはいよいよ楽器に触る時間です。音楽療法に特化した楽器から、手作りの楽器、民族楽器、遊具まで並んでいます。これらを実際に手にとって音を鳴らすところからスタート。楽器演奏の経験がなくても音は出せるものばかりだし、楽譜も不要。音楽療法士さんの指導のままにあれこれやってみて楽しむ感じです。
竪琴風のライアー(『千と千尋の神隠し』のエンディングテーマ:「いつもなんどでも」で使われていることで有名になった楽器です)も、2台持ってきてくださっていました。木材とメーカーによって音が全然違うのは弦楽器の面白さですね。が、残念なことにあんまりこの時のわたしには、ライアーの音が素敵に感じられませんでした。これも音楽療法士さんに率直に伝えてオッケー。なんといっても、音についての自分の感受性にもとづく快・不快を知ることが、目的のひとつなのです!だから「今の音はちょっと嫌」「中音域が響いてつらい」「高音域は意外に平気」なども率直にお伝えします。これ、ロルフィング®にも通じる感じで面白いな〜と感じました。
並んでいる楽器をみればわかるとおり、木や単純な金属だけで作られた楽器がほとんどです。カスタネット、リコーダー、縦笛、カエルの鳴き声が出せる民族楽器、モリンガ(アフリカの民族楽器)、ライアー。原初的なよろこび、楽しさを味わえる楽器ばかりです。ピアノのような大きな楽器や、音を鳴らすのにも練習が必要な金管楽器はありません。「コツがいらない」「手に持って鳴らせる」、「膝の上にのせて奏でられる」ということがポイントになっています。
なぜかというと、本来、人は音をいくつもの要素で「聴く」ものなんですね。鼓膜だけにかぎらず、肌や内臓、骨に伝わる振動、空気の震え、そして壁などの空間に響いて返ってくる反響、残響なども含めて音を聴いてます。が、耳管開放症の患者は、不調のある耳に意識が集中してしまいがち。耳で聴くことにばかり感覚が集中してしまっている状態です。それを本来のありように戻してゆくのが大切だからです。
わたしが今回もっとも気に入った楽器はこちら:クロッタ。四弦で、弦の調律はチェロと同じになっています。チェロよりもシンプルで小さな構造です。これを弓で弾いた時の音の深さ、響きが最高でした!指で弾くよりもはるかに大きな音が鳴るので、弓ってすごいのな!とひとり静かに興奮。太ももの間にボディを挟むようにして弾くクロッタの中低音は、大腿骨や床に接した足裏を通して、骨盤や背骨に響いてきます。当然、メロディなど弾けませんので開放弦のまま弓をおしたりひいたりするだけですが(笑)、繰り返す低音の響きを体で感じていると、なにかが純化されてゆく感覚になります。チェロを習いたいという若い頃の希望がまたむくむくと持ち上がってきてしまいました。
音楽療法は、耳だけでなく体全体で音を聴く、音を出す、手足でリズムをとったり呼吸を使ったりして音を出しながら出した音を感じる体験をとおして、音との付き合い方をもういちど感得する過程なのかもしれません。
こうわかっていても、ピアノを20年以上習っていた習性で、「自由に弾いてみてください」と言われると「え・・・楽譜ないし…自由にって言われても、自由に弾くためにはまずスキルが必要なのにそれもないし…」と戸惑ってしまいます。まぁ、やっぱり「きちんと」「ちゃんと」弾かなくちゃという気持ちが根強いんですよね。それと、ええかっこしいなんです。へたくそな音を人様の前で鳴らすことへの恥ずかしさがどうしてもぬけない。これも今後の課題ですね。