健康を考える 〜生かされている私たち〜

昨晩、西荻窪にある醸しカフェさんにて開催されたイベントに参加してきました。

テーマは【病氣にならないカラダづくり】。
タイトルみただけで”おおっ!”ってなりました(切実)

今回は第2回めで、 『微生物たちとの共生〜Live with Microorgamism〜』というサブタイトルがついていました。私が惹かれたのは実はここ。

もとから菌とか醗酵とかが好きで、昨年末に読んだアランナ・コリンの著作もそういう意味で非常に納得ゆく内容でした。
が、私たちの体に棲んでいる細菌を増やしたりバランスをとったりしてゆくには、醗酵食品大国日本(私が勝手にそう思ってる)で暮らしている強みを、どのように日々の生活に活かせるんだろう?そこがいかんせんひとりの浅知恵ではどうにもならんと感じており、ヒントが欲しくて参加を申し込みました。

結論として・・・参加してよかったです。
講義の最初に講師の竹原直子さんがおっしゃっていた、「「心と体」とよく言うけれど、それは便宜的な区別。ほんとうは心も体もひとつのもので、そういうものでわたしたちはできているんですよ」という言葉に、深く納得しました。ほんとうにその通り。心と体をバラして、「これが心です。こっちは体です」と切り分けてみせることなんてできません。体はすなわち心であり、心はすなわち体なのです。
その価値観をもちながら、人体のしくみ・働き(いわば解剖学と生理学)と体に棲んでいる菌・微生物との関係や、それらが “何から”・”どんな”影響を受けるのかを、竹原さんは明解な説明をしてくれました。

私たちの体には、体表にも内臓にもたくさんの微生物が棲んでいて、体に有用な働きをしてくれています。私たちが健康でいるためには、これら微生物の種類が豊富で、相互の数や作用のバランスが整っている必要があると近年の研究で明らかになりました。

つまり、健康でいるためにはこれらの微生物と共生することが不可欠です。

竹原さんの素晴らしいところは「だからこうしなさい」「ああしなさい」という極論をまったく仰らないことです。

テレビや雑誌、1,000円前後で買えるノウハウ本には「毎日これをやっていれば/これを食べていれば健康に!」みたいな特集が溢れています。わかりやすいし、「私もできそう」という気持ちをおこさせるので、人はそういうものに飛びつきます。専門用語のならぶ論文を読んだり、データを集めて分析したりなんて、素人にはできないし正直面倒臭い。だから安易に流れる。誰かに「簡単に」「わかりやすく」説明してもらって、理解した気になって結論だけに飛びついて、それを愚直に、なんなら無理してでもやり続ける。

そんなことで誰もが健康になれるなら病院なんて要りませんよね。

今回の講座では、誰にでも効く万能薬的メソッドなんてないんだよ、ということが何回も強調されていました。

昨年、いわゆる「薬用石鹸」が一般の石鹸に比べ優れた効果がないこと、むしろ人体と生態系に悪影響を及ぼすことがFDAによって明らかにされました。(参考記事:「米国で販売禁止の殺菌剤含有の石鹸、日本で野放し…優れた殺菌効果なしと米当局指摘」)アメリカではすでに殺菌剤配合の石鹸には販売禁止措置がとられています。

殺菌効果を謳うせっけんや家庭用洗剤、除菌シート、除菌スプレー、抗生物質の氾濫する暮らしを私たちは送っています。細菌や微生物は汚い・危険だから清潔にしよう!それが安全で健康を守るためには必要なんだ!という発想です。

しかしその除菌・殺菌はほんとうに必要なんでしょうか?

菌を殺す、微生物を殺す薬品は、それを使う私たちの体にも呼吸や皮膚、粘膜を介して侵入します。そして、私たちの体を正常に機能させている、体に棲む微生物を殺してしまいます。微生物のバランスが崩れることはすなわち健康を害することに直結します。体に必要な異物/体に不要(危険)な異物を区別する機能が狂い免疫系の誤作動や、結合組織の再生システムの損傷をひきおこしたりします。抗生物質の副作用で重篤な健康被害をこうむる人は後を断ちません。(※1)

つまり、除菌、抗菌、消毒を繰り返す生活は人体にはむしろ有害なのです。

こう言うと、わかりやすい結論が欲しい人は「なるほど!除菌、消毒製品、抗生物質、発ガン性物質を遠ざければ健康になれるんだね。わかりました。デトックスします、ワクチンやめます、布ナプキンにします、玄米食べます…」という風に短絡しがちです。体にいいことをしたい!という心がけはよくても、「なぜ自分はそうするのか」と「ほんとうにそれは自分に必要か」のステップが欠落しちゃうんです。

ワクチンは大事です。ワクチンをワクチンであるというだけで目の敵にするのは愚かなことです。戦前までの、日本の乳児や幼児の死亡率の高さをご存知ですか?「7歳までは神のうち」というのは子どもの神性を表現しているわけではなく、たやすく死んでしまうからです。(※2)抗生物質も、適切に投与してもらったおかげで九死に一生を得るケースがたくさんあります。玄米食がいいといっても、消化器官に持病がある人には負担が高い。海藻が健康によくても日本人以外は消化吸収できない。布ナプキンがいいと言われても、フルタイムで働いていて全面切り替えするには無理がある…
人は体質(これを決めるのも微生物だと言われています)もライフスタイル、ライフステージもそれぞれ異なります。AさんにいいものがBさんにもいいとは限らないんです。

要は、”薬”や体に良いと言われるもののリスクを知ること。そのうえで自らの責任で選択してゆくことです。

近年は分析や解析の装置や技術が進歩して、精度の高い研究データが得られるようになり、そのスピードもあがっています。今日の常識が明日の非常識である可能性も高いんですね。常に情報はアップデートし、パラダイムシフトに柔軟に対応できるよう準備しましょう、と竹原さんもおっしゃっていましたが、今私たちが知っていることは、自然界の真理やメカニズムのほんの一部だけです。
わからないことの方が多いんだと常に肝に銘じておきたいです。


※1…最近読んだ中で最もショッキングだった記事:“This antibiotic will ruin you. ”
こちらの記事は、フルオロキノロン系抗菌薬を投与された結果、いくつものシステム障害を発症し手術を繰り返している女性が書いています。悲しいことに、これらの障害は永続的、つまり、治らないということです。フルオロキノロン系抗菌薬は日本でも処方されています。副鼻腔炎、尿路感染症、気管支炎等に対して処方される薬です。こちらの記事を参照なさってください。「薬剤師の脳みそ〜薬局薬剤師の勉強ブログ:FDAによるフルオロキノロン系抗菌薬への警告」

※2…鬼頭宏著『人口から読む日本の歴史』(講談社 2000)等参照。